2010年1月30日土曜日

新トカトントン

診断先生:今日はどうされましたか?

患者:私、病気なんです。

診断先生:病気だから私のところに来たんでしょ?勿体ぶらない
ですべて、お話なさい。どんな自覚症状があるの?

患者:たとえば、大きなクロスのかかった丸いテーブルで、大勢
楽しく料理を食べている時、そのクロスを思い切り引っ張った
時のことを考えると、むずむずトイレにいって何度もその衝動を
抑えなくちゃいけません。

診断先生:まあ、そんなことは私もあるがね。

患者:本当に、この人は大切な人なんていう人と対面していると
出されたお茶を突然その人にぶっかけたらどんなことになっ
ちゃうんだろうと考えて、そうして呼吸が苦しくなり、顔を歪めて
しまいます。

診断先生:なるほどね。

患者:お寺の由緒ある仏像を拝んでいる時、もうこれは、表現
できないような感情が吹き上がり、必死にこらえて、拝み続け
ますが、特にまずいのは、頭の回転のよい時で、あれこれと失礼な
想像を・・・もう仏様を拝むほど苦しいものはありません。

診断先生:もっと、もっと。

患者:期待>紅白歌合戦での段取りミス、大統領就任演説でのドモリ、
大リーグ開幕式のオペラ歌手のゲップ、生徒会代表の壇上での
お漏らし、 立ち入り禁止区域でのオケサ、朝の満員の通勤電車
の中での・・・・

診断先生:わかった、わかった、つまりあなたは当たり前のことが
当たり前のように進むことが耐えられないわけだ。常にハプニ
ングを期待し、そして、実際そうなった時のことを考え、その時の
自分の感情が想像もできず、身もだえしているんだね?

患者:そういえば格好いいですが、人間社会は恙無く全て
行われるべきものではないんじゃないか?人間なんてもっと
いい加減なものじゃないのか?と。それを思うと、いてもたっても
いられず、想像をとめることが出来ず、どこかで誰かがそれを
覗いているような気がして後ろめたさに、更に苦しくなるのです。

診断先生:あなたの考えていることは、誰にも見えない筈だよね。

患者:そうです。

診断先生:しかし、それを行動してしまったら、話は別だ。場合に
よっては犯罪者で、テロリストだ。

患者:そこまでいいますか?

診断先生:皆何を考えているか分かったら、それは恐ろしい
ことになるだろうね? 人は、それをその人の真実と呼ぶだ
ろうか?

患者:真実とは心の中の本音ですか?

診断先生:真実は、行為ですか?心の中の本音ですか?
はたまた、心に閉ざされた、過去の行為ですか?或いは
行為なり、遭遇した出来事ですか? 或いは、今ここにない
あなたが求めているものですか?

患者:いやいや、先生に私が相談に来ているんですよ。

診断先生:あなたが、そういう気持ちを抱いた時、あなたが
後ろめたく思い、診断先生に相談に来たのは、それが悪い
ことで病気だと思っているからですよね?そう思っているの
なら、あなたの心の本心の部分が病気なのではなく、
そこから派生した、様々な思いに翻弄されているとは言えない
でしょうか?そして、それを我々は、時として自身の本心
と取り違える。ところが、その後、自分は病気なんだと思う。
右に切ったら、左、左にきったら右と常にカウンターをあてて
いる。 そう考えれば、あなたがまた次に邪念を得た時、
まずは相反する想像をカウンターとしてあててみてはどう?

患者:我々は、田舎の道の運転手、右に曲がって田んぼに
突っ込むことも左に曲がって、用水路につっこむこともでき
ますが、常に右、左のカウンタをあてて道をまっすぐ走っていく・・
そういうことですか?

診断君:どうやら分かったようだね?

患者:先生、なんか分かってきました。一人になってみないと
分かりませんが、この症状に対処できそうな気がしてきました。

診断君:そいつはよかった。それでは、外で勘定と薬をもらって
ください。こんなことなら、別に相談するほどのことでもないな、
等と、ただ逃げしないように恙無く、恙無く・・・

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