2011年3月18日金曜日

焼け石に水

かつて、熱処理をしていた診断君。急ぎの品物を焼き戻しから早めに
出して、トラックに載せられるようになるまで、懸命に水をかけて冷やした
暗い過去を持つ。今日、乞われて、あるローカルの熱処理工場に行って
きたが、立派なものだ。前の自分のいた工場より綺麗だし、工場長はフランス人
であるが、炉と一緒にタイにいついてしまっただけあって、予防保全、工場内の清掃を
徹底している。どこかの元上司のように口だけではなく、自らが知的プランの
作成と、工場内作業のフォローを励行しているようで、随分と関心させられた。

こんな立派な工場も、日本人がいないから日系の仕事がとれないのだ!
不条理であるが、仕方がないことである。日本人は日本人に文句をいえないと
気がすまない。他の国の人間に怒ることはできない。月100トンの処理を
しているというから、ローカルベースでもこれだけはいけるということか?

診断君はキャパ一杯なので、定年間近のかつての上司にでも声をかけて
みようかな?なーんてね。えばっているだけで何も出来ないもんね?あの人。

300℃くらいで炉から出した鋼の塊はなかなか冷えないのである。まさに
焼け石に水・・・・不謹慎ではあるが、あの福嶋第①原発の連日報道を、見る
につけ、やっぱり熱いものを冷やすには水しかないのか?と人類の未来を
案じ絶望の嘆息。

かつて(東京に原発を)という本を読んだことがある。わざわざ田舎の僻地に
原発を建てて、都市への莫大な送電経費をかけずとも、消費地である東京
のど真ん中に原発を建設し、果たして、原発を増やすことが国家にとって
利益となるか、不利益となるかを、政府が原発の間近で考えるべきであるというこの
論調は、なかなかうんうんとうならせるものがあった。あれが認められれば
横浜原発とかディズニーランド原発とか、お台場原発とか、伊豆の踊り子原発、
湘南原発といった原発が続々と建設されていたと思われるが、原発は安全です
といいながら、少しでも人の少ない僻地に立てましょう危ないからね?という
露骨なやり方で、そもそも、津波や地震災害の頻度が高いところに原発を
たてているわけである。東京湾の方が、津波に対しては絶対に安全ではないか?

こういう、慇懃無礼というか、口と手が裏腹な人間が政治をすると、結果、
核兵器反対と、原発推進が両立できるなどと真顔で人に説教することが
できる稀有な才能を発揮し、それはそれでそれなりに偉くなってしまうので
あろう。

もうすでに世界には500基以上の原発が存在するのであるから、何を言っても
もう遅い。地球の中にあるマグマやマントルの活動を人間が抑制できないのと
同様に、原子力という技術もまた、暴走を止めることができない技術であること
を世界に知らしめてしまった。放水したり、空から水をかけたり、素人でもわかる
ような方法しかないのであろうか?

かつて、火を手に入れた人類は、逆にそれをコントロール出来ずに、日本
だけで年間5万件以上、世界で年間数万人の人が火災で亡くなっている。
またそれを武器としてつかうことも覚えて今日に至る。
原子力を手に入れた人類もまたそれをコントロール出来ずに、火と同じような
手なずけかたを覚えていくのだろうか?しかし覚える前に人類が滅亡という
ようなことにはならないんですか?と心配をしているわけである。

津波もそうだが、やはり水は凄い。火に水、焼け石に水、3号機に水である。
とはいえ、水のもつ恐るべき組織力、機動力、ぱっと蒸発して、雨になって
地上に戻ってくる、軽快な身のこなし、何より水を飲まないと人間は死んで
しまうという不可欠さ。何をおいても水にかなう存在はない。時に人間を活かし、
時に人間を滅ぼす。

なにか不謹慎に思われるかもしれないが、日本人の叡智が、今回の事故の
被害を食い止めることを祈ると共に、これが終わった後に、しれっと原発の
建設の推進をすすめることがないように祈っている。ネットで興味深い資料
 をみつけたので参照願いたい。喉元過ぎれば熱さ忘れる・・・その熱い熱湯も
 元はといえば、水なのである。
原子力発電所と原爆の違いと共通点
 原子力発電所と原爆とは、どのように違いどんなところが同じなのでしょうか。核兵器と原発の違いを表にしてみます。
 まず、核物質は核兵器よりも多く(110万キロワットの沸騰水型軽水炉だとすると、ウランの量にして132トン)なりますが、核 兵器のように2~二十数個に分けるのではなく、さらに細かく分けて(110万キロワットの沸騰水型軽水炉だと、燃料集合体にして764体)配置します。核 物質の純度は、核兵器よりは低くなります、純度を高める濃縮は費用がかかるし、核分裂反応の制御が難しくなります。中性子を外部に逃がさずに効率よく使う ための中性子反射材はどちらでも必要です。
 原子力発電だけに必要なものは、核分裂反応を制御して押さえるためには制御棒や減速材、発生した熱を取り出すためのもの(冷却材)(原子炉や建物が熔けてしまわないようにするための冷却を兼ねる)、放射線を遮蔽したり放射能を閉じ込めたりするものが挙げられます。 原子力の開発も利用も巨大な利権や社会資本が必要なので
 核分裂後の死の灰の後始末に関しては、殺戮するのが目的である核兵器では考えることは有りませんが、原子力発電でも後で何とかなるだろうとして始まってしまい、いまだに解決策がないままです。 核兵器で相手国を攻撃し戦争に勝とうとする行為は、ある意味では原子力の利用にも似ています。施設が設置される地域と利用する地域が異なり、利益を享受 する側は他方を省みない傾向があります。どこが役立てようとしているのか、どこに置いて使って誰が利益を得るか、自区内処理(自分の区域内での処理)をせ ずに、危険を担う地域と利便を受ける地域と後始末を押し付けられる地域が利益享受の側だけの都合で決められています。
項目 核兵器 原子力発電所 違いの補足説明
核物質の量 大型のほうが殺傷力は大きいが、ミサイルなど運搬手段の制限がある 地上に設置するので大きさの制限はなく、大型のほうが経済性が有利と見られている 燃料交換は年に一回の定期点検のとき全体の三分の一ほど取り替えるので、10トンほど装荷される
核物質の濃縮度 出来るだけ高純度が望ましい 天然の濃度、または出来るだけ低濃度 民需用は濃縮経費を度外視する訳にはゆかない
中性子の反射材 核爆発の効率を高めるために必要 臨界状態を維持するためと被曝を避けるために必要 格納容器そのものも含めて放射化は避けられない
核反応を制御するもの 制御不要、兵器の保管と運搬中に爆発しないように起爆装置を管理するだけ 中性子の量を制御棒で調整、炉の運転開始と停止には絶対必要、熱出力の調整は不可 制御棒の他にバーナブルボイゾンなどがあり、減速材や冷却材も制御に役立つ
放射線の遮蔽 殺戮が目的であるから遮蔽しない、兵器保管取り扱い時も軍人に対する配慮なし 様々な保守作業があるので遮蔽は必要 徹底的な遮蔽が必要なのだが、経費削減のため十分とはいえない。下請け作業員の被曝量が多い
核分裂エネルギーの取り出し 全てを開放し、破壊するエネルギーとする 熱エネルギーの一部を取り出して発電に利用するため必要 冷却材が熱の取り出しも兼ねている。エネルギーの利用率は低い
破壊や溶融を防ぐ冷却措置 破壊が目的なので、なし 原子炉は核暴走の爆発に耐える強度をもっていない、炉心を溶かす訳にはいかないので冷却する 冷却材の循環のほかに、有効性は疑問だが緊急時の冷却システムも準備
中性子発生源
核分裂の火種となるので必要 制御をするためには中性子束の測定も不可欠
核分裂生成物の管理 広島・長崎の原爆破壊の後始末で、多くの人員が二次被曝者となった 原発が始まった当初は管理できる方法が見つかると考えられていたが、いまだに解決策なし 未来永劫の子孫の負の遺産となる、危険の押し付け合いになっている
使用と設置 自国内では核兵器は使えない、他国には使う 利益を享受する電力消費地には設置しないが、安全と宣伝し地方に設置。 危険と引き換えの交付金が麻薬のような効果を建設地元に与える
水色の色つき部分の違いが原子力発電所の炉型の違いとなります。そして、赤い部分が平和利用という名で地元や子孫を苦しめる元となっているもの

2011年3月16日水曜日

津波

診断君は東京都練馬桜台の生まれ。子供の頃から、西武池袋線の
轍を聞いて育った。その親といえば、秋田からのお上りさんであるが
親父と、母親は今言うところの、熟年離婚というのを6年前にやらかし母が
埼玉の家を手に入れ、父は秋田の先祖代々の家に引き下がった。
子から勘当をいい渡され、今頃憔悴の晩年を送っているのではないか?

その父の姉さんというのは、今回地震にあった福島県郡山に住んでいる。
安否は不明だ。地震がなくてもそもそも疎遠であったので不明である。

日本の耐震建築はやはり凄いといわざるを得ない。あれだけの揺れを
もってしても倒壊する建物はなかった。直下型地震ではないとは言え、
母の話では、今まで体験したことのない揺れ云々。築25年の木造建築
も十分この揺れに耐えたという。

しかし、津波はその上をいっている。こいつはやはりとてつもない。
かつてプーケットでも、津波の凄さというものを感じたが、日本はなにより
あんなプーケットより人口が密集している。そして、山に囲まれて、大きな
受け口となっている。南三陸という町は、本当に津波の為に最新の
防護をしていたにも関わらず、あっさりとその進入を許し、人口の半分が
行方不明という、正に津波に蹂躙された町となってしまった。

まず地震の予知ということから言えば、もうこれは何年もやっているが、
養毛、育毛よりも進歩がない。
しかし、昨今これだけ、衛星写真というものが発達している現在、深海の
岩盤まで見通し、そのわずかな動きを捉えるようなことは出来ないのか?
今のスパイ衛星は、道を歩くお姉さんの胸元の隙間からみえるブラの
刺繍の色やら、黒子やらまで見えるというではないか?技術の使い
道を間違っていないだろうか?

それよりなにより、津波である。津波というものは発生した時点で、
比較的高さは低く、そのかわり時速が800kmにもなるという。それが
浜辺に向かうと向かうほど速度が遅くなり、そのために後の波が
前の波に追いつき、より巨大となり、大きな威力を伴うらしい。
なるほどそれで、よく津波がハワイを越えて、西海岸に到達したり
して、大きな被害を与えることがあるが、途中で船をなぎ倒したり、
することはない。大洋の真ん中では、津波はタダの速度の早い
波浪に過ぎない。だから、アメリカの空母も安心して、三陸沖に
いるのだろう。

昭和初期の三陸海岸の津波では、沖合いで漁をしていた小さな
小船は、全く津波の被害を受けず、岸に近づいたら、陸のほうから
被災した死体やら、船やら、物やらが流れて、初めて津波の被害に
気がついたという。つまり、津波は、岸辺の浅瀬の、狭い入り江に
入って初めて、猛威を振るうものらしい。

三陸海岸は、何度も津波の被害を受けているので、堤防などが
しっかりしていたらしいが、津波はそれを越えて陸に上ってきた。
診断君は思うのであるが、もっと波が低い、しかし、速度が速い時点
の沖合いで方向を変えることは不可能なのだろうか?早いはなしが
沖合いから20km、50kmと離れたところに堤防があったほうが、津波を
防ぐことができないか?こういう考え方はないのだろうか?

そんなところは深くて、堤防なんか無理無理という考えもあるのだろうが
建設会社も仕事がない仕事がないと談合にふけるのではなく、こういう
壮大な規模の津波よけを建設するという意気込みはないのか?
耐震建設は十分OKだし。とりあえず三陸海岸あたりに、長い浮遊式の
堤防をつくってはいかがか?深さ20kmのイカリで海底面から鎖を立てれば
海底の揺れも観測可能である。

それにしてもこれだけの人がなくなってしまった。その張本人の津波は
いずこに、靄と共に、跡形もなく去っていく。恐るべきは自然の成せる
未必の故意である。犠牲者のご冥福をお祈りします。