2013年7月23日火曜日

タイ人という名の美徳

ここに、一枚の絵がある。誰が書いたか分からないが、私はこの絵を眺めるたびに、タイ人という名の美徳を感じ、見入ってしまう。

 人にものをあげる、人からものを貰う、そういう事が、ごく日常的に行われている国なのだ。人の世話になる、人の世話をする、そういう事が、彼らの文化の根底で、ともすれば脱線しがちな猥雑な人種、階級、貧富、職業という混乱を一点で繋ぎ止めているのだ。そして、その授受するべき、財産なり食糧なり資材は豊かである。そうでなくても、食うに困らない国に、日本はどんどん投資しているのである。タイ人は、貰い方もうまい。そしてうまいことその財産を運用する。税金払わない、支払い遅い、誰もそれを駄目とは言わない。空港を閉鎖しても、デパートを燃やしても、罰されないのだから、仕方がない。

 私は20年、タイでこうして働いてきたが、彼らはは本当にポーカーフェースである。物をあげた時は人懐こい顔で喜ぶが、自身の利害を損ねる状況では、徹底的な抵抗をする。当たり前ではあるが、こんな事象を当たり前として捉えるには、随分と時間がかかった。我々は、動物なのであるから、能動的になんでもやるのも当たり前ではあるが、ただ一点、仏教にすがり、その一点を大事に、皆が秩序を持って国が成り立ってきたのであろうか? 私が言いたいのは、タイ人の持つ、底無しの強さだ。彼らをなめてはいけないということである。上の絵のような生活を今も基本のところで続けているのである。足元がぐらぐらしている日本人とは強さが違うのだ。

 今いる会社、外資系の会社がゆえに、色々と管理上の脇の甘さもあって、いくつかの不正がのさばっているようで、ある意味前の会社の上司より酷い状態(彼は少なくとも、ある時期まで、拡販の邪魔はしなかった。)になり、長くいるタイ人が会社を私物化してやりたい放題、これを診断君も随分と頑張っては見たが、なかなか立場上これ以上の肩入れも出来ず、そうこうしている間に、古巣では、異常に安い材料、表面処理の価格を、上得意先だけではなく、その2次、3次サプライヤまでばらまくというヤケクソ戦法に出ており、(よく許可がおりたものだ) とてもではないが、プライドの高い欧州企業が、これに合わせる筈もなく、そろそろ私も、この会社は潮時かと思う次第である。恐らく、高硬度表面処理業界は、これからもっともっと、安売りに励み、熱処理と一緒で、世界で最も処理賃の安い国を目指すのであろう。

 本当に、こんな愚かな夢のない状況にいつまでも付き合っている訳には行かない。前の上司と一緒で、ここでもいつか、その不正が明るみに出るのであろう。要は誰も、本当に問題が明るみに出るまで、手を下さない。これだけ工場長が入れ替わっては、本来異常と考えて然るべきであるが、その一点にあまりリスクマネージメントは入らないようだ。節穴だらけである。数字しか見ていないのだから、仕方なかろう。

 このタイの表面処理業界は、本当の個人の技を要する硬質クロムは別として、価格だけのつまらない業界に成り下がりつつある。我々が売り歩く、新しい技術に耳を輝かせて聞いてくれた、タイ人たちは、もうすでに偉くなっている。そして、今行っても、価格の話しか出ないということだろうか?

 いずれにしても、自浄能力のない会社は滅びるのみ、それが日系であれ、欧州系であれ、営業の会社であれ、技術の会社であれ。 ここは、ある意味、技術の終着駅であろうか?タイ人という名の美徳の元に、我々はどれだけ躍らせれているのだろうか? 日本からどんどん中小企業が進出してきているが、正直勝算があるとは思われない。

 


 

 

発覚

前略 T専務様

 この度は、専務職をご退任されたとのこと、大変お疲れ様でございました。長い間の重責、多忙なる日々を思いますと、頭が下がります。小職は専務より20歳も年下で、会社に入ってから、専務にサラリーマンのイロハを教わりました。それこそ、甘い辛いから、明るい暗い、表裏善悪、色即是空まで。本当にお世話になった方が、こうして一線を退かれるかと思いますと、寂しい思いで一杯になります。一筆書かせてください。

 専務のおつきになられていた、熱処理事業部長というのは重要な役職であったと、今更ながら感心しております。なにしろ、T社を始めとする大手自動車メーカーが金型をどのように熱処理し、どのように表面処理するか?それを導き、提案し、世界各地にある熱処理センターを統括していくという、こういうことは並の努力では出来ますまい。椅子に座ってうたた寝して連休の遊びの計画ばかり立てている重役が多い中で、専務は常に現場に先陣を切っておられた。入荷出荷の金型を自ら検品し、熱処理歪を矯正し、工員と汗をかきながらジグ付けをされた。そんな専務のお姿を見て、どれだけ心強く思ったかお判りでしょうか?そういう方と一緒に17年もやっていたことを誇りに思っております。

 まあ、ゴルフに関しては、折角専務に教えて頂きましたが、私は本当に落ちこぼれ、未だに100切るか切らないかと寂しい状況です。専務のゴルフへの思い入れは、仕事中に抜けてプレイするくらいの熱心さで、我々も仕事が忙しく、生半可な気持ちでやっていましたので、随分怒られたものです。お客さんに、「それ入れたら、友達なくすで」と言われたオリンピック四階建てのパットを、専務が動じもせずカップに沈めて、危うく大口受注を逃すところだったことも、私の部下が別の日に同じようにそういうパットを入れようとして一言「それ入れたら転勤や」と圧力をかけ、実際に入れたところ、本当に転勤対象になったという、今思えば、公私混同の暗い情熱も、専務のゴルフに対する愛と、仕事に対する生半可な気持ちが成せる業だったのでしょうか?こんなことは誰にも真似ができない。ここまでのゴルフ好きは見たことがない。

 女性についても、随分と教えられました。タイに来た頃は、タニヤという歓楽街に会社のお金で、いつも連れていかれました。遊びというのは、自腹を切るもんじゃないんや!ああ、今でもそれが真似できない自分を歯がゆく思います。それを極限まで実践されたのが、タイの御愛人のコンドミニアムを、次々と駐在員の社宅とし愛人への小遣い節約、自らも出張旅費を節約するために出張時はその愛人所有のコンドに宿をとり、会社の資材と会社の従業員で、御愛人のコーヒーショップのベランダを作らせ、挙句の果てに独身貴族の部下を彼女の本夫に仕立て、会社を辞めさせるという荒技は、最早誰にも思いつくところではなく、(しかもこの方は、若くして亡くなってしまわれた!)私も会社を辞める時にプレゼンテーションまで作ってこのことを総務部長に説明をしたものの、あの聖人君子のTさんがそんなことするわけはないと一笑に付されました。こりゃ敵わない。確かにこんなこと誰も信じるわけない!逆らった私が馬鹿だった!

 今振り返ると、サラリーマンとして成功する秘訣をいつも背中で教えられてきたのに、それが実践できずに辞めてしまったことは、返す返すも、惜しいことをしたと思うし、自分が情けない。

このように華麗なる専務のご経歴ですが、最近ちょっと気になることを耳にしましたので、この場を持ってお聞きしたい。

 まさかとは思いますが、何かとんでもない不正が発覚して、それでお辞めになるのではないですよね?まさかそんなどんくさいことはしないですよね?しかも、それは、もしかして、以前私に、「熱処理屋がなんで加工の仕事もするんや?加工はもうやりたくないんや」 と言って、名古屋に飛ばされようとされましたが、つまりは、御自分とお仲間の利益に支障が出るからなんて、そんな理由で起こった転勤話ではないでしょうね? 私が色々な方面から入ってくる情報では、どうもそんな話なんですが、専務がそんなへまをやっているとは思えませんが、如何ですか? ご返信くれませんか?違うと分かれば、急いで、勘違いしている外部の方々に訂正をいれたい。

 タイ人の辞めた営業マン個人の会社に表面処理価格の、法外な値引きをしているようですが、これも、専務のお仕事ではありませんよね?あれなら、工場から直接買うより、彼から買った方が安いようですが???いや、そんなせこいことに、専務は絡みませんよね?やるとしたらもっと大きな悪事の筈だ。

 夜も更けてきました。久々のブログで疲れが出てきました。お返事をお待ちしております。 お気を悪くされないで下さい。不正はどこにでもあるようです。専務ほど巧妙なのは、聞いたことがありませんが..........